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X線光電子分光装置(ESCA):詳細(研究者向け)

分析課題「XPSを用いたSnS/InSXヘテロ接合のバンド端不連続の測定」

SnSはp型半導体であり、1.1-1.5eVのバンドギャップを持っている。一方InSxはn型半導体であり、約3eVのバンドギャップを持っている。したがって、両者を積層することでヘテロ接合太陽電池を作製することができる。これら構成元素Sn、In、Sはいずれも無害であり、この点は現在太陽電池に用いられている化合物CuInSe2、CdSに比して大きなメリットである。

ヘテロ接合太陽電池においては、接合界面におけるバンド端不連続が効率に大きな影響を与えることが知られている。しかしSnSのヘテロ構造についてはバンド端不連続の測定例がない。そこで本研究ではXPSを用いてバンド端不連続を測定した。

InSxおよびSnS層はパルス電圧印加電気化学堆積法にて作製した。XPSによるバンド端不連続の測定は以下のように行った:まずそれぞれの物質に対し、金属4d軌道レベルと価電子帯上端のエネルギー差を測定する。ついでInSx層上に薄いSnS層を堆積した試料を作製し、ヘテロ界面近傍におけるIn4d、Sn4dレベルを測定する。それを用い、以下の式で価電子帯不連続を得る。

ここではそれぞれSn4dレベル、In4dレベル、SnS価電子帯上端、InSx価電子帯上端、界面におけるSn4dとIn4dの差である。得られたエネルギー値を代入すると、価電子帯不連続ΔEvは0.77eVとなり、またInSx、SnSそれぞれのバンドギャップ Eg(InSx)=2.75eV、Eg(SnS)=1.3eVを用いると、伝導帯不連続ΔEc=0.68eVが得られる。

太陽電池の動作においてはSnS中で光励起された伝導電子がInSx側に流れ込み、外部回路に出力として流れ出る。0.68eVの伝導帯不連続はこの流れを妨げる可能性がある。試作されたSnS/InSx太陽電池の効率の低さはこのバンド端不連続が一因となっている可能性がある。

Fig.1 The band diagram

Fig2: The spectra of In4d core level for InSx and Sn4d for SnS. the linear extrapolation for the leading edges of In4d (upper inset) and Sn4d (lower inset) to get the VBM of InSX and SnS, respectively.

Fig3: The spectra of In4d and Sn4d core levels for lower layer (InSx) and upper layer (SnS) of the heterojunction, respectively.

(A.M. Abdel Haleem, 市村正也:18th Photovoltaic Science and Engineering Conference 3-2p-001 (Jan. 2009, Kolkata, India)